口腔ケアは全身の健康に直結
飲み込んだ歯周病菌の3割は大腸まで届く
お口に中に歯周病があると、歯周病菌や歯肉の炎症によってできた物質が歯ぐきの毛細血管から全身に散らばり全身疾患に悪影響を及ぼすということはご存じの方も多いと思います。さらに研究が進み、口から飲み込まれた歯周病菌が腸にまで届いて腸内環境を乱すという研究報告がされています。
細菌は胃に送られた時点で胃酸により死滅するのではと疑問に思う方も多いかもしれません。確かに胃酸はほとんどの菌を殺菌しますが、胃酸抑制薬を長期服用されている方やピロリ菌に感染している方、ストレスなどが原因で胃酸分泌が低下している場合、さらには水を飲むと胃酸は薄まってしまい、その結果、3割の菌が死滅さずに胃を通過して腸まで届いてしまうということが最近の研究報告でわかってきました。とくにも歯周病菌の『ジンジバリス菌』が強力で大腸まで到達して腸内環境を変化させるといわれています。
口腔ケアで腸内環境を守る
腸といえば、食べ物を消化・吸収する器官というイメージがありますが、じつはそれだけでなく、外敵から私たちの身体を守る免疫システムを担う免疫細胞の約7割は腸に集中しています。"腸は最大の免疫器官"と呼ばれるのはそのためです。歯周病菌が腸に到達すると外敵が来たと免疫細胞が認識して、歯周病菌を一斉攻撃することで体内が戦争のようになってしまい、これが全身の臓器の炎症に、ひいては全身の疾患に影響を及ぼすといわれています。とくに歯周病菌の中でも強い口臭を生じさせる「フソバクテリウム」という菌は大腸がんの発症から増殖、転移というすべてのステージに関連していることもわかってきました。このことから、歯周病治療を徹底することで大腸がんの発がん予防や進行を抑制する可能性があるとして期待がもたれています。
歯周病予防を心がけることが全身の健康につながります。毎日のセルフケアは歯ブラシだけでなく、フロスなども使って歯と歯の間、歯肉との境目など歯垢がたまりやすい場所を念入りに、就寝前はとくに丁寧にお掃除しましょう。歯石は歯磨きでは落とせないので歯科医院での定期検診とプロケアを受けて、健康を守っていきたいものです。