唾液が味覚の感じ方に影響
食事をよりおいしくする秘訣
食べることは人生の大きな楽しみの一つです。高齢になってもしっかりと食事ができるように、健康な歯をできるだけ多く残すことが大切なことはいうまでもありません。今回は毎日の食事をよりおいしく食べるためには唾液の存在が欠かせないという研究をご紹介します。
唾液にはじつにたくさんの有効な働きがあって、でんぷんの消化を助けるアミラーゼという酵素を含んでいるほか、抗菌作用やむし歯を防ぐ作用、口の中を清潔に保つ作用のほか、パロチンという若返りを促すホルモンを含み、アンチエイジング効果まであるというまさに万能薬といった存在です。その中に酸やアルカリを中和するという役割もあって、これを"唾液緩衝能"(だえきかんしょうのう)といいますが、この役割は歯や歯肉組織を酸から守る働きのほか、酸っぱさを低下させるという可能性も示唆されています。
味覚は酸味のほかに甘味、うま味、塩味、苦味の5つありますが、唾液とこうした味覚についての関係を、岡山大学術研究院医歯薬学域(歯)口腔生理学の吉田竜介教授らの研究グループが研究しました。同大学歯学部の学生87人(男性43人、女性44人)の協力を得て、唾液緩衝能、つまり酸やアルカリを中和するという役割が高い群と低い群に分け、味覚の感受性(敏感に感じ取る能力)との関連を調べました。
"うま味"の感じ方に差が出る
結果は、緩衝能が高い群の方が低い群に比べて、5つの味覚のうち"うま味"について敏感に感じ取る傾向が高いと報告されています。また、安静時の唾液量を比較すると、唾液緩衝能が高い群の方が低い群より、唾液の分泌が多い傾向があることもわかりました。
吉田教授は「よりおいしく食べ物を食べるためには唾液はたくさん分泌される方が良いのかもしれません。今後もいろいろな味に関する研究をしていきたい」と語っています。
口内を中性に保とうという唾液の働きが歯を守るだけでなく、味の感じ方にも影響を与えていることが分かりました。食事を十分に味わい、豊かな人生を送るためにも歯、歯肉のトラブルはもちろん、唾液の分泌が減ってしまったなど口腔内の変化ついても早めに歯科医に相談して対処することが肝心です。