循環器疾患を招く睡眠時無呼吸症候群
口呼吸はいびきのもと
睡眠は人にはなくてはならないものですが、夜間に何度も起きてしまったりするとなかなか熟睡感が得られないものです。そうした睡眠の質の低下や睡眠障害を引き起こす原因に口呼吸が関係している場合があります。口呼吸で眠ると、スポットといわれる舌の口腔内での定位置(上顎の前歯の付け根にあるふくらみのすぐ後ろあたり)の位置を離れて下垂してしまい、空気の通り道である上気道を狭めることになります。その狭くなった気道を呼吸のたびに空気で出入りするため周囲の粘膜が振動していびきという雑音が発生します。
いびきは睡眠中のことなのでご自身で気づきづらいのですが朝、起きたときに口の中が乾いているという場合は夜間、口呼吸をしてる証拠といえ、いびきが生じている可能性が大きいといえます。いびきは睡眠時無呼吸症候群(SAS)を伴う場合が多いので要注意といえます。実際の検査は就寝前にご自身で検査機器を装着して行いますが、睡眠中の呼吸状態を鼻の呼吸センサーで、血中酸素飽和度や脈拍数などは指先のセンサーで計測し、睡眠の質を検査します。「無呼吸」(睡眠中呼吸が止まっている時間が10秒以上の場合)と、「低呼吸」(無呼吸ではないが止まりそうな弱い呼吸)が1時間あたりの平均は5回以上(5回未満は正常)で日中の眠気や倦怠感などの症状を伴う場合に「睡眠時無呼吸症候群」(SAS)と診断されます。SASは単に睡眠の質の低下という問題だけでなく、循環器疾患との関連が明らかになってきており、そのリスクは高血圧症には約2倍なりやすく、狭心症や心筋梗塞では2〜3倍、慢性心不全で約2倍、不整脈2〜4倍、脳卒中約4倍、糖尿病2〜3倍と報告されています。そのため、最近はこのSASを循環器病として捉え、積極的な治療が行われるようになってきました。
マウスピースでいびき防止
治療はCPAP(持続陽圧呼吸療法)という装置を用いて鼻マスクを介して気道に常に圧力を加えることで舌根が浮き上がらせ、空気の通り道が塞がれないようにします。歯科的な治療としてマウスピースを装用する治療法があります。マウスピースは歯科で上下の歯型を取り製作されます。マウスピースは噛んだときに下顎が4〜7o前に出るような噛み合わせにすることで舌根が引き上げられることで気道が拡がり、いびきやSASが緩和される効果が得られます。マウスピースを装着することで熟睡できるようになりすっきりと目覚めることができる、体調がよくなったという声が多くあります。マウスピースは旅行などにも携帯可能なのでいびきが心配な方には便利だといえます。
ただ、下顎の位置を前の方にずらすために違和感や痛みを覚える場合もあるので、調整をしながらご自身に合ったマウスピースを製作する必要があります。
家族からいびきを指摘され、さらには無呼吸になるということであれば軽く考えず、医療機関への受診が薦められます。現在はいびき外来や睡眠外来など窓口も増えていますのでぜひ一度ご相談されることをお薦めします。