毎年の歯科健診の義務づけに向けて
国民皆歯科健診とは
定期的な歯科検診の必要性については皆さんも熟知されていると思いますが、6月上旬にまとめられる国の経済財政運営の指針(「骨太の方針」)に「国民皆歯科健診」が明記され、導入に向け検討を始めていることがわかりました。
今回の「国民皆歯科健診」とは全国民に毎年の歯科健診を義務付けるというもの。歯の健康を維持することで他の病気の誘発も抑え、医療費全体を抑制することを狙って政府・自民党では令和7年頃の導入を目指して鋭意検討中ということです。
歯を守り、歯を残すことが国民の健康を下支えするとともに健康寿命を伸ばして逼迫する医療費の削減にもつながるとして国としても「国民皆歯科健診」の導入に踏み切った背景があるといえます。
歯周病と全身疾患との深い関係
平成元年からスタートしている「8020運動」では80歳で自らの歯を20本残すことが提唱されていますが、65歳以上の高齢者において自身の歯を多く残す人ほど健康で入院回数等が少ないことが明らかになっています。このことから歯が健康な人は身体的にも健康が維持しやすく病気になりにくいので医療費もかからないということがいえます。
さらにはさまざまな病気と歯科疾患、とくに歯周病との関連が明かになってきており、とくに歯周病菌は血管を通って全身に運ばれることで体内のさまざまな炎症反応を起こすといわれています。心疾患の原因ともなる動脈硬化もその一つで、動脈硬化を起こした心臓の血管(壁)から歯周病菌が検出されたことがきっかけで研究が進み、循環器病に関しては歯周病にかかっている人はそうでない人に比べ1.5〜2.8倍も発症しやすく、脳梗塞については2.8倍なりやすいと言われています。
また、糖尿病について歯周病は糖尿病の合併症として位置づけられており、歯周病の重症化により糖尿病も悪化し、またその逆もあることから、お互いに影響しあう関係にあることが明かになっています。そのほかも認知症や肺炎、肥満(メタボリックシンドローム)、胎児の低体重・早産などとの関連性も指摘されています。
歯周病は自覚症状がほとんどないので気づかないうちに進行していきます。定期検診が重要なのは自分では気がつかないうちに発見できて早期治療ができるということです。今回の政府の指針にもあるように、口腔内の健康を守ることで他の病気にかかるリスクを下げることができれば、私たち自身の身体的・経済的負担を軽減することができ、ひいては国の保険財政も逼迫させずにすむということがいえます。1人ひとりの日頃の口腔ケアと定期検診がいかに大切かということがわかります。