お口の健康が大事な理由
歯周病がリウマチの発症リスクを高める
歯周病が全身疾患に及ぼす影響についてはここでも取り上げてきましたが、近年この分野の研究も進み、今では百を超える全身疾患が歯周病と関係していると言われています。リウマチもその一つで、1997年に関節リウマチ患者において歯周病の罹患頻度が高いことについて初めて報告されました。
関節リウマチは関節内の滑膜とよばれる組織に持続的に炎症が生じ、軟骨や骨が徐々に破壊されて関節が変形してしまう自己免疫疾患(自分自身を敵とみなして攻撃してしまう)で、原因は特定されていませんが細菌やウイルス感染、過労やストレス、喫煙、出産、遺伝などいくつかの要因が重なって発症するといわれています。最近の研究によれば歯周病菌の感染も原因の一つにあげられ、注目を集めています。
ジンジバリス菌が関与
歯周病の原因菌の中でもとくにリウマチに関与しているのはジンジバリス菌(P.g菌)で、このP.g菌はシトルリン化といって周囲のたんぱく質の形を変えてしまう性質があります。その形が変わってしまったタンパク質を生体側では異物とみなして抗CCP抗体という抗体を作り排除しようとします。歯周病の進行によってたくさん作り出された抗CCP抗体が血流にのって体内を巡り、関節内の滑膜で暴れだしリウマチの発症に関与するのではないか考えられています。実際にリウマチの患者さんは重症の歯周病の人が多く、口の中の細菌が関節内にまで移動しているという報告があるほか、歯周病治療することでリウマチの炎症値などが改善されるといったことからも歯周病が関節リウマチの発症や進行に影響を及ぼしていることはほぼ間違いないといわれています。
リウマチのほか糖尿病も歯周病との関連が深い疾患ですが、お口の中の状態と全身疾患とは無関係なように見えてじつは大いに関係していることが驚きといえますが、今後の研究によって歯周病と関連する新たな疾患がみつかる可能性は十分にあるとされてます。
日々の口腔ケアを入念に行うことは全身の健康にもつながることはもとより、リウマチ治療中の方であればなおさら、歯周病を放置せず必ず治療して改善を図ることが大事です。歯周病がよくなっても、年に3,4回の定期検診とクリーニングを受けて、口腔ケアの継続をお勧めします。