夢の【歯生え薬】の実用化に向けて
2024年に新薬の臨床試験開始予定
私たち哺乳類は乳歯のあとに永久歯が生えてきたらそれ以上、歯が生え変わることはありません。サメやワニなど何度も生え変わる動物もいて、私たちも失った歯が再生できたらどんなによいかと思いますが、そんな夢のような「歯生え薬」の研究開発が実用化一歩手間まできていて、先天性無歯症という生まれつき一部の永久歯が生えてこない遺伝性疾患の治療薬として期待されています。
この「歯生え薬」の開発は、2020年に設立された京都大学発のベンチャー企業「トレジェムバイオファーマ」が手がけて、この分野の研究を20年以上重ねてきた京大大学院の高橋克准教授(現在同社の最高技術責任者)らが創業しました。
新たなは歯をどのようにして再生するのか、想像もつかないようなことですが、実はわたしたちのあごの骨(歯槽骨)には永久歯の次に生える歯の芽のようなものがあることがこれまでの研究でわかっています。ただ、この歯の芽が歯として生えてこないのはその成長を抑制するたんぱく質があるためです。高橋准教授はこのたんぱく質を発見し、この働きを抑制する中和抗体を開発することに成功しました。この中和抗体を投与すれば、歯の成長をブロックしていたものをなくなるので歯の再生が期待できます。実際にマウスやフェレット、犬などの実験ではこの薬の効果が発揮され、歯が生えてくることが確認されています。
同社では安全性の確認試験や医薬品の製造方法・精製の検討を行って、2024年から先天性無歯症の治療薬として臨床試験を開始する予定です。
日本発、世界初の新薬に期待
この薬が実用化されれば、先天性無歯症の患者さんだけでなく、むし歯や歯周病で歯を失ったり、入れ歯を使用している人など様々な症例に対応できるようになるでしょう。現在のブリッジや入れ歯、インプラントという治療のほかに、自分自身の歯を再生するという根本的な治療が加わり、歯科治療の世界も一変するのではないでしょうか。
日本発、世界初のこの夢の新薬への期待が高まりますが、現在あるご自身の歯を大切に使い続けていくという気持ちは忘れずに日々の歯ブラシと定期的なクリニックでの検診とクリーニングを継続して欲しいと思います。