歯周病対策で万病予防
食道がんの細胞から歯周病菌を発見
歯周病は歯茎が細菌に感染して炎症を起こす病気ですが、影響は口腔内だけにとどまらず、糖尿病や動脈硬化、心疾患や認知症、誤嚥性肺炎、女性ホルモンへの影響など全身にその影響をもたらすということはここでも何度も取り上げてきました。近年はさらにがんとの関連性も指摘されているのをご存じでしょうか。
国立がんセンターの調査で、食道がんの細胞からトレポネーマ・デンティコーラという歯周病菌が高い割合で検出されたことで歯周病との関連性を示唆されています。そのメカニズムは口腔内から下りてきた歯周病菌によって食道粘膜に炎症が起き、慢性的な炎症が続くことで正常細胞のDNAが傷んで、最終的に発がんを招いてしまうのではないかというものです。
健康の秘訣は歯周病対策
アメリカのハーバード大学をはじめとする国際的な研究グループの研究でも食道がんと胃がんについて調査しました。女性約10万人と男性約5万人を対象に1988年から2016年にかけて長期間にわたる追跡調査を行ったところ、199人が食道がんに、238人が胃がんにかかったと報告されました。歯周病との関連性を調べたところ、歯周病にかかっていた人は、かかっていなかった人に比べて食道がんになるリスクが43%高く、胃がんになるリスクが52%高いという結果でした。
同研究グループは、「レッド・コンプレックス」と呼ばれる、もっとも病原性の高い3種の歯周病菌のうち2種が食道がんに関連しているとし、歯周病菌が食道がんのリスクを高める可能性を示しました。また、口腔衛生状態が悪いと歯周病菌が胃がんの原因となる内因性ニトロソアミンの形成を促進することも報告されていて、歯周病が生活習慣病のみならず、胃がんや食道がんの発症に関わるリスクは高いとしています。
歯周病ががんをはじめさまざまな全身の疾患と関連性があることが解明され始め、口腔内の衛生に保つことが虫歯や歯周病の予防はもとより、万病の予防にもつがることが再確認されました。
歯周病対策はからだ全体の健康を保つ秘訣ともいえます。