“歯ごたえ”のある食事をしていますか?
柔らかい食事の落とし穴
現代人の食生活は硬いものより柔らかいものを好む傾向にあり、店頭には加工食品や脂質を多く含む柔らかい食品が並びます。私たちの毎日の食事も根菜類を多用した伝統的な和食が姿を消し、ハンバーグや卵料理、豆腐料理などが中心になり、パンなどもふわふわした食パンが好まれます。
こうした柔らかい食品はあまり噛まなくてもよいので、あごの筋肉にも負担がかからず、すぐに飲み込めるので食事の時間もかかりません。忙しい現代人にとっては好都合といえますが、ただ、そこには落とし穴があり、噛むときに動かす咬合筋の筋力低下を招き、噛む力が弱くなってしまうのです。こうした噛む機能の低下は、以前は噛めていた硬いものまで噛めなくなり、さらに柔らかいものを求めるという負のスパイラルに落ち込む結果となります。
そうなると、食生活にも偏りが生じますが、とくに柔らかい食べ物の代表格といえば、炭水化物です。炭水化物に偏った食生活はメタボリックシンドロームも招きやすくなるといえます。
噛む力がアップする調理法
お子さんの場合はよく噛んで食べることがとても大事になります。というのはあごの発達を促し、歯列が乱れる不正咬合の予防になるからです。また、しっかり噛むことで食事を味わい、おいしいと感じることが味覚を育てることにつながるのです。ですから、小さい頃から、噛みごたえのある食事をすることが、将来の豊かな食生活への基盤をつくるといっても過言ではありません。
ですから、日々のメニューも栄養面にプラス、歯ごたえも意識して考えたいものです。といっても難しいことではありません。食材の切り方を少し変えるだけでもよいのです。たとえばキュウリなども輪切りから、乱切りにするだけで噛む回数も2倍になります。噛む回数が多くなれば、それだけ唾液も分泌され、消化吸収もされやすくなります。
また、複数の食材を組み合わせることで、噛む力がアップします。たとえば、小松菜のおひたしなどにもキャベツやゴマなどを加えるだけで、脳が違う食材があることをキャッチして噛むことを意識させてくれます。
食材は切り干し大根などの乾物のほか、油揚げなども噛み切りにくく、飲み込むまでに時間がかかる食材という点でお薦めです。
暑い季節は麺類などが多くなりがちですが、歯ごたえのある1品を加えることでお口の機能低下の予防になります。その際、水やお茶、スープなどで流し込まないでできるだけよく噛んで飲み込むようにしてください。
お料理を作る側としてはできるだけ食べやすくと配慮しがちですが、そのやさしさが噛む機能の低下を招きます。少々食べにくいくらいのお食事で大丈夫。日々、“歯ごたえ”のある食事を意識して健康維持に努めましょう。