犬歯は縁の下の力持ち。噛むだけではなく、その役目とは?
あごを正しい位置に誘導するガイド役
歯には食べ物を咀嚼して消化を助けるという働きがあることは皆さんよくご存じの通りです。ただ、歯の役割はそれだけではありません。じつはあごの動きをコントロールすると同時に、あごを常に正しい位置に保つという働きもしているのです。
とくに注目されるのは犬歯です。犬歯はその形からして先が鋭く、異彩を放っています。犬歯はその名の通り、動物でいうところの牙の名残といえ、本来は獲物を切り裂くために重要な働きをしている歯です。人の場合はもはや獲物を捕らえて食べるということはしないので、先がこんなに尖っている必要はないのですが、じつは別のことに役立っているのです。
犬歯は糸切り歯とも呼ばれ、中切歯、側切歯とともに前歯に含まれます。すぐ隣は第1小臼歯であり、ちょうど前歯と奥歯の境界にあたることから、犬歯は噛み合わせの目印として働きます。つまり、上下のあごが正しく噛み合うようにガイドする役割があるのです。犬歯の尖った部分が引っかかりとなって噛み合わせのズレも常に正しい位置に誘導して戻すことができるのです。
歯根が最も長く頑丈な理由
実際にあごを少し左右に動かしてみてくだい。犬歯が当たってそれ以上はずらせないはずです。つまり、下あごが横方向にズレないように、犬歯がストッパーとしての役割を果たしているのがわかります。と同時に犬歯が当たることで、ほかの歯は逆に接触せずに浮いて離れます。歯ぎしりのように左右に揺さぶられることに弱い奥歯ですが、犬歯が左右の動きを受け止めてくれることで奥歯などほかの歯に負荷がかかるのを防いでくれているのです。犬歯の歯根は永久歯の中でも最も長く頑丈にできているので横から受ける力にも強く、寿命も長い歯です。まさに縁の下の力持ちのような存在といえます。
犬歯は審美的にも重要な存在で、前歯の中では唯一、尖った形をしているのでそれがアクセントとなり、口元の魅力を倍増させているといえます。
今回は犬歯についてみてきましたが、永久歯1本1本にはそれぞれ重要な役割があります。大切な歯を1本でも失わないように日々のメンタナンスには十分に気を配ることが大切です。同時に噛むという機能の要を司るあごの関節にも負担をかけないよう、いたわりながら使い続けたいものです。