近年、急増している口腔がん。早期発見、早期治療がなにより大事
口内炎と間違われやすい口腔がん
最近、芸能人の方の舌がんの公表が話題になりました。そこであらためて舌がんという存在に関心を持たれた方も多いのではないでしょうか。
口腔がんには「舌がん」「歯肉がん」「口腔底がん」「頬粘膜がん」「口蓋がん」「口唇がん」などがあり、その中で60〜70%を占めるのが舌がんです。症状は口腔内の痛みや腫れ、潰瘍、出血、口臭などがあげられます。目で見て確認できるところにできることから発見しやすいと思われがちですが、口内炎などと間違われやすいことから放置されて癌が進行してしまうケースも少なくありません。
ですから、口腔がんに対する正しい知識を持つと同時にお勧めしたいのは、月1回のセルフチェックです。口腔内をくまなく観察し触ってみて、白や赤い斑点、治りにくい口内炎や出血しやすい傷の有無、できものやしこりなど固くなったところがないか、あごの下や首の脇の腫れの有無、食べ物や飲み物がスムーズに飲み込めるかなどをチェックします。詳しくは日本口腔外科学会HPの「口腔がんのセルフチェック表」を参考にしていただければと思います。また、年1回は歯科医院あるいは口腔がん検診を実施している機関(口腔がん撲滅委員会「口腔がん検診・口腔健診」実施医院参照)を受診することをお勧めします。
先進国では唯一、口腔がんの死亡数が増加
口腔がんの発症率は年々上昇しており、日本は先進国の中で、唯一口腔がんの死亡数が増加している国です。
欧米では歯科検診の受診率が70〜80%以上と高いので口腔がんの発見も早く、とくにアメリカでは国をあげて口腔がんの早期発見、早期治療に努めており、死亡率を19.1%にまで激減させています。ちなみに日本の口腔がん患者の死亡率は46.1%とアメリカの約2.5倍も高いのです。
口腔がんに対する認識を高め、早期発見を徹底すれば、決して怖いものではありません。浅い口腔がんのうちに手術すれば切除範囲も小さくてすむので後遺症もなくてすみます。
口腔がんの真の原因ははっきりと解明されていませんが、細菌感染のほか、合わない入れ歯や詰め物などによる粘膜への慢性的な刺激が誘因となっていたり、喫煙や重度の飲酒も口腔がんのリスクを高めると言われています。ちなみに喫煙者の口腔がんの死亡率は非喫煙者の約4倍ともいわれています。口腔内をつねに衛生的な状態に保つことも大事で、普段から歯科医院で定期検診とクリーニングを受け、口腔内のトラブルに対しても早期に対応しておくことが、口腔がんの予防という意味からもたいへん重要だということがおわかりになると思います。